◆サンテリアって何ってりあ(Orisha〜神々のお勉強ノート)

私は、あるCUBA音楽を演奏するチームに参加してるんですが。その音楽を演っていくのに、CUBAの地に深く根付いているサンテリア;Santeriaなるモノをよく判っていないとその音楽(の用語とか、背景とか)がよく判らない、ということがありました。(実はサンテリアは、うちのチームでやっている音楽のみならず、CUBAのもっとポピュラーな音楽にも〜NGラ・バンダもロス・バンバンもそれから「あの」ブエナ・ビスタのメンバーだって〜切り離せないくらい深く関係している、アフロキューバンミュージックの必須課目みたいなものなのでした)

にも関わらず、なかなか今ひとつ判っていなかったサンテリア……よし、じゃもう少し勉強してみようじゃないか、しかもそのままじゃすぐ忘れちまう(しかもこのことに関して日本語で記された文章資料って、極端に少ないし)ってなことから、判ったことをここに書き記していこうと考えました。そんなわけで、ここは私による私のための"お勉強"が少しずつ増えて陳列されていくコーナーになっております。
※そんなわけで、ここはほぼ独学でまとめた結果が記されています。ので、その文の内容が必ずしも記述的に【正しい】とは断言いたしません。ここを読んで「それは理解が違うよ」とか「この書き方はおかしいから正確にはこういうべきだぜよ」と気がついた方は、どうかぜひとも教えてください。勉強しますので。※※そういった不確実性のことも含め、このテキストは一応、無断で引用・転載しないでください。どうぞ、よろしくお願いいたします。

↓ ↓ ↓ お勉強進捗状況(&予定) ↓ ↓ ↓

Santeria('01.3/1) > Orisha(3/5) > Eleggua(3/22)>Oggun(3/23) > Ochosi (4/4)> Ochun(4/9)> Chango(4/10) >BabaluAye(4/11) >Obatala(5/16)> Yemaya(6/20) >Oya>Osain>Orula>Oddudua ...

Santeria 〜 CUBAのアフロ系音楽のルーツ、サンテリア 〜

◆サンテリア(正確には「サンテリーア」と“i”にアクセントをつけて発音)は、アフリカをルーツとしCUBAで広く深く親しまれ、そして今現在でも信仰されている宗教です。ただ「信仰」だけでなく、この国の音楽や舞踊ととても密接に結びついていて、アフロキューバンミュージック(ルンバRumba も、ソンSonも全部含めちゃっていいかしら?)の根本的な支柱となっています。CUBAでは今もつぎつぎと新しいバンドが生まれ、新しいサウンドが作り出されていますが、サンテリアの文化背景を全く背負っていないミュージシャンはまず居ないといっていいかもしれません(言い過ぎかなぁ? でも誰のCDを聴いても、必ず1曲や2曲、歌詞にサンテリアの神様の名前が登場する曲があったりするものです)

◆サンテリアの歴史をたどってしまうと、それはヨーロッパ諸国(スペイン)がCUBAを植民地化し、主産業たるサトウキビ栽培プランテーションの労働力として、アフリカ人の「奴隷」を大量に送り込んできた1800年代にさかのぼります。「奴隷」の彼らは、それこそアフリカ大陸のさまざまな地域から連れてこられました。ナイジェリア、コートジボアール、アンゴラ、セネガル、リベリア、そしてコンゴ...それぞれ、自分たちの地域で信仰していた、自分たちの宗教文化を携えてCUBAに移り住んできました。サンテリアは、そうした宗教文化のひとつです。CUBAに連れてこられたアフリカ人の中でも比較的人数が多く、CUBAの文化形成に大きな影響を与えたナイジェリア西部の「ヨルバYoruba族」の信仰が原型となったものです。

◆ヨルバ族はCUBAに自分たちの信仰を持ち込みました。が、それはいつしか、プランテーションの「支配者」であるヨーロッパ人(まあ、スペイン人ですね)の宗教=カトリックと混ざり合っていきます。おそらくカトリック教会が世界の他の地域で行ったように、強力に"布教活動"を展開していた影響でしょう。ヨルバ族の子孫は、自分たちの神々(オリシャOrishaと呼ばれる)をカトリックの聖人・聖母たちの姿・名前と重ね合わせ、同一視していったのです。(プランテーションの支配者たる白人たちは、アフリカ人が敬虔なカトリック信者となって、その"聖者"たちを崇めていることを知っていましたが、そこで崇拝されていたのが、実際はその"聖者"に重ね合わせられたヨルバのOrishaであるとは気が付かなかった、とも言われています)
カトリックの"聖者"と重ね合わされたヨルバのOrishaを崇める宗教。それゆえに、これは、サンテリアSanteria(もしくはサントSanto)と呼ばれるそうです。もちろん、これは"聖者"を示すSaintの語に由来する呼び名なのでしょう。

※ちなみに、サンテリアは別の呼び名として、ルクミLucumiという言葉で表されることもあります。これは、ヨルバの言葉で"友だち"を意味するものだそうです。またさらに別名として、レグラ・デ・オチャRegla de Ochaという名称もあります。Ochaは、Orishaの変形語、Reglaはスペイン語で「ルール、規則」の意味ですが、ここでは「宗教規律」といった意味合いで使われるようです

◆ナイジェリア・ヨルバからCUBAに伝来した信仰は、こうしてサンテリアとして現在に至ります。が、ハイチにおけるヴードゥーVoodoo信仰、ブラジルにおけるマクンバMacumba、南アメリカ北部におけるカンドンブレCandomble、そしてトリニダード・トバコの信仰でも共通した宗教文化があり「Orisha」が崇拝されているようです。アフリカでの信仰が、同じような歴史的経緯を経て、各地に散拡していったものでしょうか?(だから、「サンテリア」でweb検索するとサンバ=ブラジル派の人のサイトとか、ジャンベ="もろアフリカ"派のサイトにも繋がちゃうんですよね)

余談ながら。CUBAに根付いたアフリカ系信仰はサンテリアだけではなく、ナイジェリア東部のイボ族の宗教に由来する「アバクアAbakua」(もしくはカラバリCarabali。宗教的にニャーニゴNanigoと呼ばれることもあるらしい)、ダホメイDahomey族に由来する「アララArara」、コンゴCongoのバントゥーBantu族に由来する宗教音楽として「マクータMacuta」、「パロPalo」、「ユカYuka」というものもある。このへん私もよくわかってないので、詳しくはまた個別に調べます(予告)。

('01/03/01_TAKASAWA;↑top


Orisha 〜 歌とリズムとダンスによって伝えられる「神」。オリシャ。 〜

◆キリスト教の祈りを受けるのはイエス様で、仏教の開祖は仏陀様です。が、サンテリアの崇拝対象つまり神さまは何十人といます。ギリシア神話でオリンポスを舞台としていろいろな性格のいろいろな神様が出てくるのに、ちょっと似ているかもしれません。このサンテリアの神様たちが、すなわちオリシャOrishaです。ヨルバでの信仰に由来する神様です。

◆前項でもふれましたが、サンテリアの神様オリシャは、カトリックの聖人・聖母たちと習合しているのが大きな特徴です。個々の神様については詳しくはまた後で記述しますが(というか、それこそが今後のお勉強課題になっていくんですが)、たとえば、ババル・アジェBabalu Ayeというオリシャはカトリックの聖ラサロに、チャンゴーChangoというオリシャは聖バルバラ(セント・バーバラ)と同じ"神様"ということになっています。サンテリアには、こうしたオリシャ達がたくさんたくさん登場します。その相関関係もまた複雑で奥深く、私のお勉強課題もネタ切れになることなしに続けていくことができるわけです。

◆さて、それぞれの神様にはそれぞれ固有の「リズム」があり、ひとは打楽器(Bataという太鼓などが使用される)でそのリズムを演奏することで、それぞれの神様と“交信”をします。ただ打楽器リズムだけではなく、それぞれ「歌」も「詩」も「踊り」もそこに加わり、それぞれの神様に固有のパフォーマンスが行われます。(たとえばElegguaという言葉は、神様の名前である同時にその神様の歌の名称であり、リズムの名称であり、踊りの名称でもあるわけです)。

◆これらが、一般に「サンテリアの音楽」や「サンテリアの踊り」として認識されているものです。CUBAに訪れる観光客はそれを見て“ああこれが、CUBA名物のサンテリアか”と思うものですが、もちろんそれは単なる伝統芸能ではなく、サンテリア信者の人が神と交信するための実践的な手段であるわけです。また、音楽に関して言えば、これは宗教行事での音楽としてだけでなく、ポピュラー音楽にも盛んに取り入れられています。そのリズムのモチーフは、たとえばIrakereでもNG La BadaでもLos Van Vanでも(Orquesta Reveなんかもっと顕著!)、あるいはもっと新進のバンドのレパートリーにもかなりの頻度で耳にすることができるものです。サンテリアが、アフロキューバンミュージックの精神的・文化的支柱となっていることの、ひとつの現れでしょう。

('01/03/05_TAKASAWA;↑top


Eleggua 〜 エレグア/儀式で必ず最初に出てくる「道」の神さま 〜

◆Eleggua(エレグア)は、数多いOrishaの中でもまず一番目にでてくる神さまです。彼は、どんな儀式のときにおいても最初に呼び出され、最初にいけにえを捧げられます。サンテリア(ルクミ)の祝祭や儀式はすべて、このエレグアに捧げる歌やリズムや踊りによって始まり、そして終わるときもやはり「エレグア」で終わります。彼は、神々と人間との間をとりもつメッセンジャーの役割を担っているのです。

◆彼エレグアは、「道」を司る神であり、なかでも「十字路」やそこにある「扉」に関わる神です。門番の役割を果たしているといってもいいでしょう。(ここで言う"十字路"とは、人間の精神的な面と、物質的な面との交点をも、指し示すようです) 門番であるエレグアは、運命の鍵を持っていて、ひとの命運を左右する「幸運と不運」あるいは「チャンスと死」の扉を開閉します。数多いサンテリアの神々の中でも、彼はこの運命の鍵を持つがゆえに、もっとも恐ろしい(?)力を持ったひとりとされているようです。

◆しかし、そんな力に反して、彼は「いたずらっ子」のような姿や振る舞いで表現されます。片足で飛び跳ねたり、人をからかいに来たり、その動きは軽快です。彼のコスチュームは「赤」と「黒」。やはり赤と黒色で飾られた帽子をかぶり、手に自在鈎のように曲がった木の枝を持っています(この鈎枝も赤と黒です)。この鈎枝は、人を導く「矢印」であるとも言われます。

◆彼はまた、Orishaのなかにおける「4人の勇士」のグループ(Eleggua、Oggun、Ochosi、そしてOsun)の中でつねに先頭にたつ存在としても知られています。
またエレグアは、必ずエシュEshu(Eshu-Eleggua;人間性における諸問題の化身とされる)と密接な関係にあり、これは、人間に内在する「善と悪」の二面性を示すものと言われています。
(エシュは、創造の神オバタラが最初に創造した存在で、彼の友人となったが、その分裂した性格によってしばしばオバタラに災いをもたらしたようです)

◆彼は、Atochaの息子(Jesus?)、もしくはパドヴァの聖アントニオ(San Antonio de Padua)と関係づけられています。【1月1日】が彼、Elegguaの日です。

('01/03/22_TAKASAWA;↑top


 〜 オグン/鉈を手に勇ましく踊る「戦い」の神 〜

◆Oggun(オグン)は鉄、金属、鉱物およびすべての道具を司り、そして山や戦争(戦略)を支配する神(言葉をかえると、彼は文明がもたらす恩恵と、そして破壊の両面を象徴する存在、であるそうです)。彼は鍛冶屋や機械工、エンジニア、化学者、兵士の守護神でもあり、鍵(キー)や錠前(ロック)やチェーン、そして刑務所(牢獄)を支配する力を持っています。

◆オグンは、どんな儀式においてもエレグアの次に呼び出されます。彼は、手に鉈(もしくは山刀=片刃で幅の広い剣)を持った姿で知られ、オグンを踊る踊り手も、やはりこの鉈をもって踊ります。そのダンスは草を刈る仕事、もしくは戦争を表現するものです。

◆オグンの色は「スミレ色」、または「緑と黒」。シュロの葉でできた腰ミノ(Mariwo?)を身につけているのが彼の特徴です。彼はEleggua、Ochosi、Osunとともに「4人の勇士」のひとりとされています(Elegguaの項で触れた通りです)。

◆彼は、聖ペドロ(San Pedro:または聖ペテロSt.Peter)と同一視されています。【6月29日】が彼、Oggunの日です。

('01/03/23_TAKASAWA;↑top


 〜 オチョーシ/弓矢を手にした「狩猟」の神 〜

◆Ochosi(オチョーシ)は、別にお調子者だというわけではありません。彼は「狩猟」や「法律的なトラブル」を司る神であり、Oggunと共に刑務所(牢獄)を支配しています。彼はまた偉大な魔術師でもあり、兵士や猟師、漁師などのように“物事をよく見る力”を備えた存在です。この力は、Ifa(イファ:サンテリアの宗教儀式で行われる占い)において大切な役割を果たします。

◆オチョーシの色は主に「緑」と「黒」(「青」と「黄」と書いてある文献もありました)。弓と矢を手にしています。オチョーシのダンスは、この弓に矢をつがえる仕草で踊られます。彼はライラック色もしくは薄い紫色の服を着ていて、虎の皮で作られた帽子と肩掛け鞄を持っています。珊瑚のビーズと紺色のビーズを順に並べた飾りも彼を象徴するものです。彼を祭る祭壇には、狩猟と漁に関わるものとして鹿の枝角や3本の矢、3匹の犬の像、小さな鏡などが飾られます。

◆オチョーシは、カトリックの聖ノーバート(St.Norbert)にあたります。【6月6日】が彼の日です。

('01/04/03_TAKASAWA;↑top


 〜 オチュン (Oshun:オシュン)/「川」を護り、愛と美を象徴する女神 〜

◆Ochun(オチュン:もしくはOshunオシュン)は、川を司り、女らしさ、母性、愛、美、富などを象徴するOrishaです。色香や官能性にあふれたシンボルとされ、蜜や金(gold)のイメージも持っています。彼女は人間の微妙な感情や深い心情などに関わり、そしてまた、女性の出産を助ける存在としても知られています。

◆オチュンはまた、戦略、戦術の女主人としての性格も持ち、一説にはチャンゴーChangoの妻として位置づけられてもいるようです。彼女は、女性の魅力というものを深く理解し、その"魅力"の使い方に長け、そして世界に富をもたらすことになっています(どうやら彼女は、とてつもなく素晴らしい女性のようですね)。オチュンのダンスも、女性の魅力を強調する肉感的な動作がとりいれられたものです。

◆オチュンの色は「黄色」もしくは「金」。ビャクダン(sandalwood)の葉、もしくはクジャクの羽でできた黄金色の扇を手に持っています。5個の金の腕輪を身につけ、半月、星、太陽などの刺繍や金の鈴が縫いつけられた黄色の服をまとっています。その服には胸部に菱形のストマッカー(胸衣)がついていることがあります。彼女の周りにはいつも金色の小さな魚やエビ、巻き貝、あるいは鏡、宝石、珊瑚、そしてシェケレやカウベルといった楽器も飾られます。女性の「美」に関係するモノ、たとえばブラシや化粧道具などもオチュンに関わるものであるとされています。

◆オチュンは愛徳の聖母マリア(もしくは慈愛のコブレ:la Caridad del Cobre)と同一視されています。【9月8日】が、彼女Ochunの日です。(余談ながら、名前は似ていますがOsun〜魔法儀式の神〜は別の神さまです)

('01/04/09_TAKASAWA;↑top


 〜 チャンゴー(Shango:シャンゴー)/あらゆる“男らしさ”を象徴する「雷神」 〜

◆Chango(チャンゴー:もしくはShangoシャンゴー)は、あらゆる意味で“男らしさ”を備えた男神です。彼は雷と稲妻、火、放射線を支配し、また戦争と太鼓(Bata)をコントロールします。彼は男性的な美の象徴であり、そのための音楽とダンスによって表現されます。勇気に満ちあふれ、苦難多き道にも耐える強さを備え、そしてまた、嘘つきで、女たらしで、喧嘩好きで、ギャンブル好きでもあります。世の人間がもっている美徳と欠陥を備えた存在と思ってもいいでしょう。

◆「Changoは、たった一度だけ子供と話をする」という言われ方もあります。これは、彼が一度真理を照らせば、ひとはそれ以上何を質問する必要もないくらいに、その真理を理解する(するべきだ)ということを意味しているそうです。一度真理を照らす、という表現は、彼が雷(稲妻)の神であることと、とてもイメージが重なるような気もしますね。

◆チャンゴーの色は「赤」と「白」。赤と白のストライプ柄のルーズなシャツとズボン(しばしばそれは脚部を裁ち落としたカットオフパンツだったりします)を着ています。胸をはだけ、その上にやはり赤白縞の短いジャケットや、さらに頭上に王冠をかぶっていることもあります。そして、手には両刃の手斧。この両刃の手斧は、戦い好きな彼を象徴する重要な道具です。チャンゴーのダンスでもこの手斧が用いられます。目を大きく見開き、敵を脅すように口をあけて手斧を振りかざす。一方、女性に対しては、自らの股間をつかんで「俺のモノはこれだけスゴイぞ」と誇示して踊る、そんな戦闘的かつ色情的な踊りがチャンゴーの踊りです。

◆彼チャンゴーは、カトリックにおける聖バルバラ(バーバラ:barbara)と同一視されています。上記のように、Yorubaにおいて彼は「男の」神ですが、カトリックで雷の守護者とされる聖バルバラ(聖女)と習合されることで、性別のはっきりしない存在になっているそうです。【12月4日】が彼の日です。

('01/04/10_TAKASAWA;↑top


 〜 ババル・アジェ/脚を引きずりボロ服をまとった「病気と健康」の神 〜

◆Babalu Aye(ババル・アジェ)は、病気と健康を司る神です。天然痘、ハンセン氏病、性病、そのほかあらゆる病気、感染症をコントロールし、その病気を蔓延させることも、そして治す力も備えています。自分や自分の家族や恋人の病気を治したいとき、人びとは、彼ババル・アジェに祈りを捧げます。

◆ババル・アジェの色は「薄青紫」と「黒」。「青い線の入った白」で表されることもあります。木の皮の繊維をたばねたホウキを手に持ち、タカラガイもしくはコヤスガイの貝殻(これはサンテリアの占いで重要な役割を果たします)のついたズック布をまとったぼろぼろの服装で知られています。脚が悪く、杖となる棒を持ち、痛々しく脚を引きずっています。ババル・アジェのダンスも、そのように脚を引きずり、ときに地面に倒れ、そしてときに、空気中の疫病の源を手で追い払うような動きで表現されます。

◆ババル・アジェは、聖ラサロ(St.Lazaro/Lazarus)です。【12月17日】がババル・アジェの日で、「サンラサロの日」とも呼ばれます。この日は、CUBAのサントの日でもとくに大事にされる日のひとつで、毎年特別な宗教行事が行われます。

('01/04/11_TAKASAWA;↑top


 〜 オバタラ/世界を造りだした「創造主」であり、万物の父と崇められる神 〜

◆Obatala(オバタラ)は、地球および全世界を造りだした創造者であり、すべての人間性を司る神です。人間の意思や思考、知恵、心、夢などを支配し、それらを純粋に浄化する力をもっています。単に物理的な“腕力”のような力だけではなく、“頭”に内在する力を備えているということになるわけです。その偉大なる力ゆえに、オバタラは他のすべてのOrisha達からも「父親」として尊敬されており、Orishaの間でなにか議論すべき問題があったときには、いつもオバタラが呼び出されることになるそうです。

◆オバタラの色は、清浄な「白」です。純粋で慈愛に富み、そして平和を愛す彼は、必ずいつも全身白の衣服に身を包んでいます。4枚のオウムの羽を飾った白い王冠をかぶり、銀の腕輪をしています。服に、太陽と月が刺繍されていることもあるようです。象牙でできた卵や、白いビーズがつづられたネックレスも、オバタラに関わる装飾品です。オバタラは、その父性ゆえに「山」の姿で表現されることもあります。物静かで落ち着いたふるまいの神さまなので、オバタラを踊るダンサーはいわゆる"ダンス"ではなく、老人のようにゆっくりした動作で彼を表現します。

◆オバタラは、慈悲の聖母マリア(=聖母マリアがもつ3つの属性〜法の聖母、愛徳の聖母、慈悲の聖母〜のひとつ:ちなみに愛徳の聖母はOchun)、もしくはメルセデスMercedesの聖女と同一視されています。【9月24日】がオバタラの日です。

('01/05/16_TAKASAWA;↑top


 〜 イェマヤ(Yemoja:イェモハ)/あらゆるものの母である「海」の神 〜

◆Yemaya(イェマヤ:もしくはYemojaイェモハ)は、すべての生命とすべてのOrishaの母親です(オバタラの妻ともされているようです)。彼女は海および湖を支配する神さまです。海は地球のあらゆる生命の出生地、いまある世界が生まれ出てきた“子宮”を象徴するものであり、Yemayaはその「すべての母」たるシンボルとなっているわけです。彼女の名前は「Yeye Omo Eja(魚の子ども=無数の子どもたちを擁する母親)」を短縮したものだそうです。「魚の子ども」とは、「海から生まれた生命」を示すと同時に、子宮内の胎児が人間の形になる前に魚のような姿として生命をスタートさせることも示しているようです。

◆海の神、水の神であるイェマヤは、それゆえの強さを備えていると伝えられます。曰く「水は何ものにも抵抗しない。しかし何ものも水に抵抗することはできない。ゆえに彼女は強い」。象徴的な話ですね。※これはOrishagiftサイトの解説者John Mason氏の言葉です。

◆色は「青」。それに「白」も加わります。そして彼女の数字は「7」。七つの海に由来する数字です。イェマヤは青と白に彩られた7枚のスカートを身につけています。彼女のダンスは、このスカートを波のように広げ、ゆらして、ゆったり円を描くように踊られます。彼女が手にもっているのは、agbegbeと呼ばれる扇。クジャクまたはあひるの羽で作られ、真珠やタカラガイが飾られた扇です。さらに、7つの銀の腕輪も身につけているようです。彼女を祭る祭壇には、太陽や満月のほか、小さなアンカー(いかり)、救命具、ボート、7本のオール(櫨)、そして銀の7つの輪や鍵や星、あるいは網(漁網?)や貝殻、タツノオトシゴ、ヒトデなど、とにかく「海」にまつわるものが飾り付けられます。青い7個のビーズとやはり7個の水晶玉(ビーズ)を交互に7回綴ったネックレスも、イェマヤを象徴する装飾品です。

◆彼女の歌は、Yacotaヤコタという名称でも知られるゆったりとした6/8拍子のリズムでスタートします。「Yemaya Asesu〜 Asesu Yemaya〜」という詩から始まるその歌は、Lucumiの歌の中でも最も美しい旋律をもつもののひとつと言っていいでしょう。

◆イェマヤは、Reglaの聖女(The Virgin of Regla)と同一視されます。【9月7日】がイェマヤの日です。

('01/06/20_TAKASAWA;↑top


 〜 オャ/ 〜

(次回 掲載予定)※予告情報:オャは、シャンゴー(チャンゴー)の妻であるそうです。

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 〜 オサイン/ 〜

(次々回 掲載予定)

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参考させてもらっている文献:
〔web〕
・『Drumming The Gods』 by Luis M. Nunez
  
http://www.iac.net/~moonweb/Santeria/Drum/TOC.html
・『Yoruba es otro secreto』 by Klaus Worsdorfer-Kaiser
  
http://members.aol.com/Klauswk/yoruba.html
・『Conjunto Folklorico Nacional de Cuba』 by Bembe Records(John Lewis)
  
http://www.bembe.com/conjunto/
・『Orisha Accessories! sacred art in honor of the Orishas. 』 by John Mason
  
http://www.orishagifts.bigstep.com/
・『Orisha Net』
  
http://www.seanet.com/~efunmoyiwa/



〔書籍/論文〕
・『ラテンアメリカ・カリブ研究 第6号:17-27頁(c)1999
  「90年代キューバ、アフリカ系カルトの行方」』 by 工藤多香子
・CD『 Musica Yoruba 』(Bembe Records(c)1996) ; linar-notes
・『キューバ音楽紀行』さかぐちとおる著 東京書籍刊
・『キューバ音楽』八木啓代/吉田憲司著 青土社刊
・『ラテン音楽入門』中村とうよう著 音楽之友社刊
・『 Diccioario de la Musica Cubana 』( Letras Cubanas )Helio Orovio